工房ダイアリー

マルイ製ステアーAUG 修理&カスタム作業(2014.02.13)

1.JPG本日の作業は、マルイ製ステアーAUGの修理&カスタム作業です。「AUGミリタリー」にSP用レシーバーを移植する、というAUG好きなら誰もが一度は行った事がある純正パーツ同士の組み換えカスタムですね。マルイ製の「AUGミリタリー」は生産終了になってしまいましたが、「ダイハード」世代としては何とも寂しい限りです...。まだ少年だった自分にはJACのステアーは高くて買えず、仕方無くマルゼンの微妙に小さいステアーを買った記憶があります(笑)今にして思えば「人生、時には妥協も必要だ」という大人の階段を上がった最初の1歩だったかも知れません。
2.JPGそんな話はさておき(笑)今回のステアーですが、「昔、他店でカスタム(流速系)した本体だが、動かないので修理して欲しい」という事でご依頼頂きました。購入後、そのまま使わずに数年間放置していて最近になって初めて作動させたところ200発程で動かなくなったそうです。作動確認したところ全く通電しなく、何も反応がありません。電気系統のトラブルと考えられますので分解作業に入ります。メカBOX内部のパーツを見たところ、基本的には純正パーツを流用したライトカスタムですね。ギア、ピストン、軸受け等の駆動系パーツも純正品です。しかしながら流速系だからなのか、メインスプリングだけが不釣合いな程、高レートのスプリングが組まれています。そもそも動かない状態だったので実際の初速は不明ですが線径・巻き数から推測するに「M130」相当と思われます。本来はこのレベルのメインスプリングを動かす場合、トルクアップギアへの交換が必要(純正ギアの減速比(18;1)では完全にトルク不足の為)ですが、今回のメカBOXの駆動系は完全ノーマル品です。この状態で強引に動かしていたとすると、過大な電流が流れる為、電気系パーツへの負担はかなり大きくなります。
 
3.JPG一般的な「M95メインスプリング※上段」との比較です。線径の太さの違いは一目瞭然ですね。
4.JPG各部を調べたところ、通電不良の原因は「モーター」でした。完全に死んでいますのでおそらく純正ギアのまま、高レートスプリングを強引に動かしていた事による過負荷でローターのコイルが焼き切れたと考えられます。
5.JPGブラシも熱で変色していますので、かなりの負荷が掛かっていたと思われます。下が正常品のブラシです。
6.JPG通電不良の原因が「モーター」という事は分かりましたが、「そもそも、何故ヒューズが切れなかったんだ?」という疑問が浮かびます。今回は配線関係も純正品ですので「ヒューズ」も付いていますし...。モーターが焼き切れる程の過負荷が掛かっているのであれば、その前にヒューズが切れるはずですが、何故かヒューズは切れていません。
7.JPG念の為、ヒューズを取り出して確認したところ、あらま!ビックリの「30A」に交換されていました(泣)スタンダード電動ガンの純正ヒューズは15Aですので倍の容量ですね。これじゃ、モーターが焼き切れる程の過負荷が掛かってもヒューズは切れないわな、という事で納得です。マルイ製電動ガンの場合、タイプによって数種類のヒューズ(コンパクト電動ガン;10A、スタンダード電動ガン;15A、HCシリーズ&次世代シリーズ;20A)が使われていますが、さすがに「30A」という選択肢は無しですね。正常なメカBOXであれば「30A」なんて何をやっても切れないでしょうから、「ヒューズ」本来の役目である安全装置(異常が発生した際にヒューズが切れる事で回路を遮断する)としての機能はほぼ、放棄しています。では何故、わざわざ「30A」に交換したのか...。たぶん「動かなかったから」だと思います(笑)前述の通り、純正ギアのままで高レートスプリングを強引に動かそうとすると、トルク不足の為に回路内を流れる電流値は一気に増大します。通常はこの段階で「15A」ヒューズが切れますので、それ以上電気が流れる事はありません。回路が遮断される為、もちろん動く事もありませんが安全装置とはそういうモンです。当然の事ながら「ヒューズが切れちゃうから動かないじゃんか、バカヤロー!」と文句を言われる筋合いもありません。この場合、15Aヒューズは人間側のミス(純正ギアのまま、高レートスプリングを強引に動かそうとした事)が原因で切れている訳で、むしろ被害を食い止める為に自らを犠牲にして「切れてくれた」のです。「15Aで切れるんなら30Aにすれば切れないし何とか動く」という安易な考えの結果、最終的にモーターが焼き切れたと思われます。ヒューズというのは安全装置であると同時に、そのメカBOXが正常か否かを判断するテスターとしても活用出来ます。通常のセッティングであれば15A(スタンダード電動ガンの場合は)が切れる、という事はどこかに問題がありますよ、というサインです。「ヒューズのA(アンペア)数を上げて強引に動かす」というのは、根本的な原因(メインスプリングのテンションに対して、駆動系のトルクが不足している事)は何も解決していませんので、何とか強引に動くかも知れませんが、ツケは必ずどこかに回ってきます。大抵はスイッチの焼損や今回の様にモーターの故障という電気系の異常となって現れます。このような点に関して「機械」はある意味、人間以上に正直で律儀です。その場しのぎ的な対応をしても、根本的な原因を直さない限り、必ずどこかにシワ寄せが来ます。目の前の臭い物にフタをしても、別のところの臭いフタが開くんですね。今回のメカBOXも、スプリングレートに対応した駆動系強化を行っておけば「15A」ヒューズも切れずにモーターが焼き切れる事も無かったはずです。

8.JPG故障に至るまでの経緯や原因が分かったので、問題のある箇所を改善して正常な状態に仕上げます。いつも通り全てのパーツを洗浄して各部を点検します。特に今回の場合はモーター以外のパーツもダメージを負っている可能性が高いので点検は入念に行います。
9.JPG発射弾数が少なかったのが幸いしてか、セクターギア以外は無事でした。純正のセクターギアは亜鉛ダイキャストですので、そもそも高レートスプリングに耐えられる程の強度はありません。単純に減速比の問題以外にも純正ギアで高レートスプリングを動かす事には、色々と問題が生じます。発射弾数はかなり少ないようですが、それでもセクターギアはここまで擦り減っていました。
10.JPGステアーのフルオート用接点は元々、スパークで痛みやすいのですが加えて今回は強引なセッティングだった為、200発程度の使用でも結構なダメージになっていました。表面を磨く事で今回は再利用出来そうです。
11.JPG
12.JPG社外製のVer3用スプリングガイドは、ツメを固定しているネジが緩んできますので、ネジロックで再固定します。ここが緩むとガイドが暴れて最悪、ピストンがロックして駆動系破損になる場合があります。
13.JPG
14.JPGかなりの年数が経過している為、チャンバーパッキンは完全に変形しています。ゴム製品の経年劣化による硬化・変形は避けて通れませんので消耗品と割り切った方が良いですね。特にチャンバーパッキンは実射性能への影響も大きいですし、パーツ代も数百円ですので。

15.JPG新品チャンバーパッキンと比較すると硬化・変形具合がハッキリと分かります。プニプニ(笑)してみると同じ純正チャンバーパッキン同士とは思えない位、硬いです。クッションラバーも同様に硬くなっていますが、よ~く見てみると、古いクッションラバーの方が小さくなっていますので、経年劣化で収縮するのかも知れません。
16.JPG

17.JPG新品と並べて潰すと、硬さの違いが明らかですね。これだけ硬化してしまうと、実射性能(特に命中率)への影響は無視出来ないレベルになります。尚、経年劣化によって硬化したチャンバーパッキンは、「抜弾抵抗」は増える為、場合によっては初速が向上したりもします。初速だけを見て「まだまだ大丈夫」という判断方法はあまり通用しません。ゴム製品の場合は、「期間」で交換するのがベストと思います。
18.JPG

19.JPGお客様と相談した結果、今回の作業を機に正統派(笑)なカスタム内容へチェンジする事になりました。メインスプリング交換、駆動系強化等を行って仕上げました。お持ち込み時の状態が壊れていた為、元の状態との比較は出来ませんでしたが、レスポンス、サイクル、燃費、耐久性等の全ての点で大幅に改善しているはずです。当店では数多くの修理作業を行っていますが、「不適切」な作業によって、かえって被害が拡大しているパターンが多いです。やはり大事なのは基本的な機械の構造を理解した上で「正しい方法」で作業する、という事だと思います。時には応用的な変則チューニングも存在しますが、「応用」はあくまでも「基本」が出来ていての「応用」です。電動ガンのカスタムに限らず何事も「基本」が大事ですね、というお話でした(笑)

KEN

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修理・カスタム作業の現場のナマの声を紹介するコーナー。海外製電動ガンならではのトラブルや、その手直しノウハウをお見せできるところまで解説します!

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